りぼんの読書ノート

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小説フランス革命9 ジャコバン派の独裁(佐藤賢一)

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シリーズ第9作では、ルイ16世処刑後の混乱の中から革命独裁が立ちあがってくる過程が描かれます。

国王処刑に反応したイギリスからも宣戦布告を受け、欧州戦線でも敗色が濃くなり、ヴァンデ地方の内乱まで抱え込んだパリでは、革命が先鋭化していきます。非常時体制として中央には公安委員会が、地方と軍では派遣委員が、さらには革命裁判所が設置されますが、この時点ではまだ穏健なジロンド派が権力を手中にしていました。しかしジロンド派は、困窮したパリのサンキュロットたちの蜂起によって追いこまれていくのです。

本書の主役は、パリ市の第二助役に就任したエベールですね。「くそったれ」を口癖にするほど言葉づかいは悪く、下ネタばかり口にするとんでもないハゲ親父なのですが、彼は独特の直観を持っていたのです。憧れのマラには遠く及ばないことは自覚していたエベールでしたが、発行する新聞でのペンネーム「デュシェーヌ親父」の名でパリ市民から仲間として慕われるようになっていたんですね。

ジロンド派は徐々に追い込まれていきます。王党派と名指しされたデュムーリエ将軍は処刑され、過激派マラを逮捕したものの市民の圧力で釈放を余儀なくされ、直観で危機を感じ取ったロラン夫人が提唱した「地方への議会移設」も実行に移せないまま、1793年5月31日を迎えてしまいます。

1789年7月14日、1792年8月10日に続いて、パリは再蜂起。ここが革命の分かれ目でした。民主主義を信奉し、暴力を恐れ、「精神的な蜂起や道徳的な暴動」を説いてきたロベスピエールは、暴動の鎮静化を訴えるのか。それとも・・。危機を察知したダントンは、ロベスピエールジロンド派との和解を進めるのですが・・。

次巻では1793年6月3日に起きた「国民公会からのジロンド派の追放」と、ジロンド派が作り上げていた非常時体制を手に入れた「ジャコバン派独裁の完成」が描かれることになります。「革命の終焉」まであと3巻!

2013/4