りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ルパン傑作集9.ルパンの告白(モーリス・ルブラン)

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奇岩城以前の「怪盗時代」に時間を戻して、スタイルも初期の作品に合わせたような短編集です。

「太陽のたわむれ」 ルパンが見つけた光の点滅暗号の送り主は、ルパンがかけつけた時には既に殺害されていました。この男が、妻に財産を持ち逃げされて話題になっている男爵家の執事と知ったルパンは、行方不明の夫人が殺害されていることを見抜きます。

「結婚リング」 不仲の夫によって息子を連れ去られ自身も監禁されたイボンヌは、かつてプラトニックな思いを抱いたことのある青年に助けを求めます。青年は、イボンヌの指輪の秘密を守り切って彼女を助けられるのでしょうか。もちろんその青年こそがルパンです。

「影の指図」 フランス革命で断頭台に消えた徴税請負人が逮捕直前に屋敷内に隠した財宝を求めて、相続人たちが毎年同じ日に集まり続けています。その屋敷を描いた絵画を手に入れたルパンは、太陽が作る影にヒントがあると見抜きます。

「地獄罠」 刑事に扮した男によって5万フランもの大金をすられた男がピストル自殺。そこを訪れたルパンは罠にはまって刺されてしまいます。絶体絶命の窮地に陥ったルパンを救ったのは、彼を刺した若い女性だったのです。ラストのセリフは「とにかくこれだよ。好男子だということのありがたさは・・」。なんじゃこりゃ! こういう短編もあるとうことで・・。

「赤い絹のショール」 ガニマール警部をおびき寄せたのは宿敵ルパン。セーヌ川から拾った物件から殺人事件の発生を推理し、解決をガニマールに持ちかけて逃げ去ったルパンの思惑とは何だったのでしょう。ショールに宝石が編みこまれていることまで推理して、警察に届けさせちゃうんだから凄すぎます。

「うろつく死神」 相次いで災難に見舞われた娘は、何者かに狙われているのでしょうか。また、謎の病気で伏せっている父親も狙われているのでしょうか。推理はともかく、銃で撃たれて「弾が財布に当たって助かった」というのは、ルパンとしてはちょっと・・。相手も『813』や『水晶栓』のような大悪党でもないのですし。

「白鳥の首のエディス」 歴史的な12枚のタペストリーの盗難予告を出し、厳重な警戒体制をものともせずにまんまと盗み出してしまった事件の真相は? 宿敵ガニマール警部は名探偵振りを発揮して真相を見抜くのですが、ちょっと遅かったですね。いい作品だと思います。

「麦がらのストロー」 農場主から札束を盗んだ爺さんが、農場に隠れたまま消えてしまいます。村にふらりとやって来たルパンは見事に謎を解いてみせるのですが・・これっていったい何のために首を突っ込んだのか、よくわかりません。

「ルパンの結婚」 名門貴族バンドーム公爵の娘ながらオールドミスのアンジェリクに突然ふってわいた結婚話の相手はルパンでした。これって結婚詐欺じゃないですか。でもルパンの真意を知った上で、ルパンを逃がしてやるアンジェリカの心に慌ててしまったルパンでしたが・・。ルパン3世の純情さは、この話からも受け継がれていますね。

さあ、あと残り1巻です。

2013/4