りぼんの読書ノート

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ルパン傑作集7.バーネット探偵社(モーリス・ルブラン)

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奇岩城の事件の後、ルパンはジム・バーネットの偽名を用いて探偵業を営んでいました。事件で失った組織の立て直しでもしていたのでしょうか。

ところがこの探偵社。依頼人から「いっさい料金はいただきません」というのがウリなんです。ではルパンはどうやって稼いでいたのでしょうか。本書の相棒役に当たるパリ警視庁のベシュー警部は,ルパンの手口を察しながらも難事件の解決をついついバーネットに依頼してしまう、憎めないキャラです。

1.したたる水滴
銀行家アッセルマンの妻バレリー夫人が自室から真珠の首飾りを盗まれた事件は、若く多情な妻を恨んで死んでいった夫が仕組んだ罠でした。夫の残した言葉「したたる水滴」に謎を解くカギがあったのですが、ルパンはちゃっかり首飾りを手に入れてしまいます。

2.ジョージ王の恋文
田舎の古書店主ボーシュレルが殺害されますが、何も盗まれてはいないようです。実は古書にはさまれていた手紙は、元英国国王から「うるわしのドロッテ」に宛てて出された恋文であり、ドロッテの一族が現英国国王の親族ということを証明する価値があったのです。ルパン得意の「金になる」事件ですね。

3.バカラの勝負
バカラで独り勝ちしてい男が殺害されてしまいます。男は最後の勝負で負けて、皆に金を返したというのですが・・。バーネットは容疑者を集めて同じ勝負を繰り返し、真犯人を心理的に追い詰めていきます。もちろん賭け金はルパンにかすめ取られてしまいます。^^

4.金歯の男
牧師の家から秘宝を盗んだ犯人は、左に金歯をつけていたのを目撃されていましたが、容疑者には右に金歯が。毎年1度教会を訪れる男が疑われますが、それには深い理由がありました。彼を容疑者に仕立てようとするグラビエール男爵が怪しい?

5.べシューの十二枚のアフリカ株券
これは愉快な事件です。株屋のガシール氏が盗難事件に逢いますが、べシュー警部がなけなしの全財産で手に入れた株券も盗まれていたのです。これは嫌でもバーネットに頼むしかありません。今回のルパンは何も稼ぎませんでした。でも株屋の上階に住む美人フルート教師と美人タイピストと・・。

6.偶然が奇跡を作る
零落したアレスカール伯爵は、城を担保にしてカゼボン氏から借金したまま死んでしまいます。当然、城はカセボン氏のものに。遺された子供たちは、父が借金を完済していたことを証明するために城に忍び込もうとしたのですが・・。この時代には飛行船が実用化されていたんですね。

7.白手袋
べシュー警部の昔の恋人オルガは、サーカスの曲芸師になっていました。衆人環視の中で部屋から家具を盗まれてしまったというオルガがから解決を依頼されたベシューは、やはりバーネットに頼むしかありません。今回のルパンは、今も美しいオルガを手に入れちゃうんですけどね。

8.べシュー、バーネットを逮捕す
野党の大物ジャン・デロックが事故を起こし、同乗の女性ベラルディー夫人が死亡。この2人の意外な関係を証明する写真を隠したのは、大企業の社長であるベラルディー氏。実は自殺だった夫人の死の責任をデロックに押し付けようとしたのです。こういう「政治がらみ」の事件はルパンの得意とするところ。政治の世界で大金が消えても追及されないって、今でもどこかの国で起こっていそうです。

最後の事件でベシュー警部はバーネットを逮捕しようとしますが、当然うまくいきません。その代わりに、べシューを警部に昇進させる算段をつけて、バーネットは退場。ベシューがずっと気に病んでいた「良心の呵責」の対価ですね。^^

2013/4