りぼんの読書ノート

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ルパン傑作集4.強盗紳士(モーリス・ルブラン)

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「傑作集」の第4巻ですが、実際にはこれらの短編のほうが初期の作品になります。
いきなりルパンの逮捕からはじまる第1作や、6歳の時の最初の盗みや、著者ルブランがルパンと知り合いになったきっかけの事件など、全体として若い時期のルパンの活躍が描かれます。全体的にはミステリ色の強い作品が揃っていますね。

「アルセーヌ・ルパンの逮捕」
大西洋航路を行く客船に入った電報は、「ルパンが乗船している」という驚くべき内容でした。互いに疑心暗鬼に陥った乗客たちを落ち着かせ、美女ネリー・アンダーダウン嬢をなだめた語り手、ベルナール・ダンドレジー公爵の正体は? タイトル通りルパンはガニマール警部に逮捕されるのですが、その裏には失恋が・・。

「ルパン獄中の余技」
逮捕されて獄中にいるルパンがカオルン男爵のお宝を頂戴できた裏は、どんなトリックがあったのでしょう。第1作に続いて、これも反則技ですね。まさかガニマール警部が偽者だとは誰も思いませんから。「予告状」には必然性があったのでした。

「アルセーヌ・ルパンの脱獄」
前々から「裁判には出ない」と言っていたルパンの言葉も伏線でした。しかも「脱獄」ではなく堂々と「釈放」されてしまい、真相を知らせたガニマール警部も沈黙させてしまうのですから、お見事というしかありません。ルパンの泥棒修行や過去の犯罪も断片的に明かされますが、後で矛盾は出ないのでしょうか。

「不思議な旅行者」
ルパンが列車の中で強盗にあって縛られてしまいます。しかもご婦人の目の前ですから、うっかりにも程がありますね。でも、しっかり培返ししますのでご安心あれ。警察のことも欺いて手助けさせちゃうんです。

「女王の首飾り」
ルパンの最初の窃盗は6歳のときだったそうです。しかも、マリー・アントワネットも欲しがったという国宝的ネックレスを盗んだのですから凄い。ルパンの本名がラウールで、母親アンリエット・ダンドロジーが薄幸の中で亡くなったことが語られます。

「ハートの七」
ルパンの物語を書いている「ルブランと思しき人物」とルパンが出会ったという事件です。盗まれた潜水艦設計図を取り戻してフランス国外流出を阻止するというルパンの愛国者的な面が中心になる物語ですが、宝石コレクションや人妻の不倫の手紙なんかも登場させたのは、詰め込みすぎですね。

「マダム・アンベールの金庫」
ルパンがアルセーヌ・ルパンとして行った初の窃盗でしたが、逆に罠に嵌められて、手に入れたのは紙くずの偽造証券ばかり。長い期間準備して、費用もかかっているんですけどね。当時のルパンは19歳くらいでしょうか。

「黒真珠」
ルパンが盗みに入った部屋では夫人が殺害されていて、黒真珠も消え失せていました。ここでルパンは殺人の証拠を消し始めるのです。その目的は容疑者を無実釈放させた後に、自分で脅迫するためというのですから驚きます。

「遅かったりシャーロック・ホームズ
シャーロック・ホームズが初登場しますが、直接対決はありません。一足先にルパンが見破った財宝の隠し場所に、ホームズもやすやすとたどり着くのですが、到着が1日遅れていたのです。すれ違っただけで互いに好敵手と認め合う2人には、武芸者の風格を感じますね。ところで財宝の持ち主は、第1話で登場したネリー・アンダーダウン嬢でした。彼女を愛したルパンがとった行動とは?

2013/3