りぼんの読書ノート

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ルパン傑作集5.ルパン対ホームズ(モーリス・ルブラン)

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本書の原題は「アルセーヌ・ルパン対エルロック・ショルメ」コナン・ドイルから「シャーロック・ホームズ」の使用を断られた著者が、アナグラムで姓名のHとCを入れ替えた名前であり、キャラも微妙に違うのですが、日本では通常「ホームズ」としているとのこと。

本書は2編からなる「英仏両雄の直接対決」ですが、結果はどちらも引き分けですね。ルパンの本拠地フランスでアウェー・ゲームを戦うホームズは、ルパンの仕組んだ謎を見破ることには成功するのですが、ルパンの逮捕は果たせず、諸事情によって公表もできないのですから。ついでに、ルパンを信頼してホームズの前でも全く動じない美女たちに深い感銘を抱くことにもなるのです。

「金髪美女」
ある教授が購入した年代物の机の盗難に端を発した令嬢誘拐事件、フランス歴代の王冠についていたという青ダイヤを所持するオートレック男爵殺害事件、その青ダイヤを競売で入手したクローゾン伯爵夫人からの盗難事件の影に、ルパンと彼の協力者とおぼしき金髪美女が見え隠れしていました。

クローゾン伯爵から事件解決のために招かれたホームズは、ルパンと金髪美女が不可解な脱出をとげた家が全て同じ建築士の手によることを見抜いて、2人に肉薄します。ホームズを捉えて英国に送り返し、アジトを引き払う時間を稼ごうとしたルパンでしたが、ホームズもそう簡単にはやりこめられません。ネタバレになりますが、ルパンを愛し深く信頼する金髪美女の正体は、建築士の令嬢クロティルド= デタンジュです。

ユダヤのランプ」
宝石を散りばめた高価な置物を隠していたランプを盗まれたダンブルバル男爵が、ホームズに事件の解決を依頼しますが、ルパンからも同時に警告の手紙が届きます。偽装の手がかりを見破って、窃盗が内部犯行であることを暴いたホームズは、ルパンと連絡をとっていた家庭教師の女性を名指しするのですが、事件の真相には男爵家に悲劇を招く事情があったのです。ホームズさん、これは「余計なお世話」でしたね。

互いに尊敬の念を抱きながら、火花の散るような対決を繰り広げる好敵手としてホームズを描いたルブランでしたが、ドイルはこの作品を黙殺したとのこと。しかし、「ルパン対ホームズ」という構図には魅力がありますよね。後年、多くのパスティーシュ作品が生れたことにも頷けます。

2013/3