りぼんの読書ノート

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ルパン傑作集8.八点鐘(モーリス・ルブラン)

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レニーヌ公爵と名のって若く美しい婦人オルタンスの前に登場したルパンが、彼女を伴って乗り出した8つの冒険の物語。ルパンものの中でも「本格ミステリ」的な作品が並びますが、本書のルパンは何も奪わないようです。いや、最後にはオルタンスの愛を手に入れるんですねどね。^^

「塔のてっぺんで」 退屈と焦燥からつまらない男と駆け落ちしようとしていたオルタンスを引き止めたルパンは、彼女を朽ち果てた古城の探索に誘います。塔の古時計が8時を告げる音を聞いたルパンは、3ヶ月後の8時までに彼女を8つの冒険に誘うことを約束するのでした。最初の冒険は古城で起こります。不倫の末に駆け落ちしたと噂されていた男女は、実は計画的に殺害されていたと見抜いたルパンが名指しした、意外な犯人とは?

「水瓶」 パリのレストランでオルタンスと再会したルパンは、隣席の青年が読んでいた新聞記事に目をとめます。予備知識もなく、持ち時間も短い中でルパンは、明朝に死刑が執行されるという盗難犯の無実を証明することができるのでしょうか。犯人不在の部屋で紙幣が燃えるというトリックが使われています。

「テレーズとジェルメーヌ」 誰かが殺害されそうという情報を入手した2人は、エトルタへと向かいます。果たして年配の紳士が密室で殺害されてしまうのですが、犯人は妻のテレーズなのか、不倫相手のジェルメーヌなのか。そもそもこれは企まれていた殺人なのか。ルパンの推理が冴え渡ります。

「映画の啓示」オルタンスの異母妹ローズが主演した映画を見たルパンは、悪役の男優がローズに熱い思いを寄せていることを見抜きます。はたして男優はローズを誘拐して逃走。映画のストーリーをなぞって2人の居所を突き止めたルパンでしたが、なぜか警官の突入を制止します。

ジャン・ルイの場合」 若い女性がセーヌに身を投げた理由は恋人ジャンの婚約不履行。ジャンは不思議な生い立ちのために身動き取れなくなっていたのです。ルパンは鮮やかな解決策を示すのですが、「取替えっ子」の悲劇は世界共通のようです。

「斧を持つ貴婦人」 Hで始まる名を持つ若い女性ばかりを狙う連続殺人鬼に、オルタンスが囚われていまいます。数少ない手がかりの中から犯人の異常な習性を推理するルパンは、彼女を救出できるのでしょうか。

「雪の上の足跡」 前の事件で疲労したオルタンスが静養に出かけた地方の村での物語。粗暴な男爵親子に虐待される嫁を救おうとしていた青年は、男爵の息子を殺害してしまったのでしょうか。「雪道についた一方通行の足跡」トリックは、今ではもう有名ですよね。

「マーキュリー骨董店」 約束の日が近づくに連れてルパンを避けるようになったオルタンヌへの提案は、彼女が失くしていたコルサージの留め金を取り戻してみせるというものでした。謎めいた格好とセリフと手順を指定されたオルタンヌは好奇心を抑えられません。約束の時が来て、古城の大時計が八点鐘を鳴り響かせるなかで、ついに2人は・・。

作品の構成がお洒落ですね。たとえは古いけど、それまで「シングル曲」の寄せ集めだったアルバムをはじめて「トータル・アルバム」として編成したビートルズの「サージェント・ペパーズ」のような印象です。

2013/4