瀬名さんによる「ルパン像再構築」の試みである本書を読むために、新潮文庫版の『ルパン傑作集』を読んだものの、一番関係の深い『虎の牙』は含まれていませんでした。それなのに第2巻を読んでしまいました。不覚です。
ともあれ、ルパンによる盗難予告を受けて『奇岩城』事件の故地エトルタに集まった関係者たちの前に、ついにルパンが姿を現わします・・。と言いたい所ですが、イギリス製の爆撃機に搭載した新兵器で屋敷を襲撃とか、警護の警官を殺害するとか、その手口はルパンらしくないのです。果たしてこれは、謎の男・ムッシューVの仕業なのでしょうか?
混乱の中で本物のルパンらしき男に救われたドロテは、彼を父親ではないかとの印象を受けます。さらに ジャンとともに愛機ニューポールでエトルタを脱出し、パリで『虎の牙』事件に挑むルパンを手助けしようとするのですが・・。でも、ドロテとルパンの関係はまだ謎のままですし、ともに孤児であったドロテとジャンの関係も、思わぬ活躍を見せたイギリスの探偵小説家・チェスタトン氏の正体もわかりません。全ては第3巻で明らかになるのでしょうか。
しかし最大の謎は、「ルパン本人がどこでどうしているのか」という点ですね。オリジナルでは、スペイン貴族ドン・ルイス・ペレンナの正体はルパンだと明かされていますが、展開上すっきりしない点があるようです。本書はそこを手がかりにして、『813』事件以降のルパンについての真実に迫ろうとしているんですね。
『第1巻』のレビューに、新聞記者のジョゼフが、かつてのイジドール少年ではないかと書きましたが、全くの見当違いでした。彼の正体は、後年になってこの事件の顛末を語っている大作家自身のようです。
第3巻の前には『虎の牙』を読んでおくことにしましょう。
2013/5