りぼんの読書ノート

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ルパン傑作集10.棺桶島(モーリス・ルブラン)

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813のラストで断崖から身を投げたルパンが、スペイン貴族にしてフランス外人部隊の英雄、ドン・ルイス・ペレンナとして再登場する3部作の2作めにあたります。

これまでの「ルパン・シリーズ」と異なるテイストであり、横溝正史の『八つ墓村』や『獄門島』など、伝奇ミステリ分野に大きな影響を残した作品です。もっともこの分野では「シャーロック・ホームズ・シリーズ」のバスカヴィル家の犬のほうが先ですね。

第1次世界大戦中の1917年。少女時代の自分のサインを追ってブルターニュを訪れたベロニックは、15年前に亡くなったはずの父親デルジュモンと、息子フランソワが沖の小島で暮らしていると聞かされます。しかし、再会を急ぐ彼女の前で繰り広げられたのは、息子が父を殺害するというショッキングな場面でした。迷信に怯えて島を脱出しようとした村人は次々に殺害されてしまい、ただひとり孤島に残されたベロニック。

やがて彼女は、事件の背景にいるのが前夫のボルスキーだと知ることになります。娘時代に結婚してひとり息子フランソワを得たものの、ポーランド貴族を自称するボルスキーの狂気に怯えて15年もの間修道院に身を潜めていたのですが、おびき出されてしまったんですね。ボルスキーは、先妻・エルフリーデと、彼女との間に得た息子・レイノールを使って、ベロニックを追い詰めていくのですが、そこにはさらにドルイドの伝承に基づく狂気的な計画が隠されていたのでした・・。

ドン・ルイス・ペレンナことルパンは、フランソワ少年の依頼を受けた形でラスト近くになって登場し、全ての謎を鮮やかに解き、ベロニック母子を救出する役割を果たします。少々ご都合主義。本書には、フランス国粋主義的にすぎるとか、科学的には無理筋との批判もありますが、戦争中であったことと、ラジウム発見から間もない時期だったとのことで、そこには目をつむりましょう。

新潮文庫版ルパン傑作集・全10巻」を読了しましたが、大空のドロテのベースとなった『虎の牙』や、「ルパン三世」の映画に影響を与えた『カリオストロ伯爵夫人』などは含まれていませんでした。「全集」までは手が出せませんが、もう少し読んでみましょう。

2013/5