りぼんの読書ノート

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ルパン(ジャン=ポール・サロメ)

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ルパン生誕100周年を記念して制作された映画「ルパン」のノヴェライズです。カリオストロ伯爵夫人のエピソードを中心にして、ルパン誕生からシリーズ全体の後日譚のようなカリオストロの復讐に至るまでを、大河物語のように描いていきます。

冒頭のルパンは10歳の少年。父親テオフラストは「王妃の首飾り」を盗んで逃亡。幼い恋心を抱いていた従妹のクラリスと離されて、母親アンリエットとともに義兄の伯爵邸から追放されてしまいます。

15年後、怪盗紳士として登場する青年ルパンは、母の臨終の際に看護婦となっていたクラリスと再会。しかし王党派の復活を願う伯爵らの行動を追う中で、謎の美ジョゼフィーヌを救出。彼女こそが不死身の魔女と噂される「カリオストロ伯爵夫人」であり、一味はフランス王家の財宝を探していたのです。

ジョセフィーヌから恋と盗みの手ほどきを受けた青年ルパンですが、彼女の残虐性に気付くことになります。その一方で「十字架」に隠された財宝の在りかが見えてくると、意外な人物の正体も明らかになり、物語は三つ巴、四つ巴のクライマックスへと向かっていくことになります。

原作をうまく利用していますね。義眼に隠した秘密文書という水晶栓のアイデアや、隠し金庫を開ける数字が813とか、各作品の粋も集められています。もちろん、財宝の隠し場所は奇岩城に決まっています。

しかしクラリスを襲った悲劇と息子ジャンの運命を描いた「2年後」、さらに「15年後」という後日譚まで必要だったかどうか。このあたりは意見の分かれるところでしょう。なお映画の日本語吹き替え版では、峰不二子を演じる増山江威子がジョセフィーヌ役、「ルパン三世 カリオストロの城」のクラリスを演じた島本須美クラリス役だそうです。これもいいのか悪いのか、微妙な気がします。

2017/3