りぼんの読書ノート

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イレーナの帰還(マリア・V・スナイダー)

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中世的な架空の世界を舞台とするファンタジー3部作ですが、第2巻になって魔術的な要素が色濃くなってきました。

前巻毒見師イレーナで、死刑執行と引き換えに最高司令官アンブローズの毒見役となり、側近のヴァレクとともに革命国家イクシアの転覆の陰謀を暴いたイレーナは、幼いころに拉致された故郷シティアに14年ぶりの帰還を果たします。娘を失ったと思い込んでいた両親からは愛情で迎えられたものの、兄のリーフは彼女に対して複雑な感情を抱いているようです。

清廉な独裁者に率いられた革命国家イクシアと異なり、魔術師らの特権階級に率いられるシティアには自由はあるものの貧困も放置されていて、平等の概念は薄いのですね。しかもそこではイクシア旧王族の生き残りであるカーヒルが亡命していて、反攻の機会をうかがっていたのです。前巻でイレーヌの魔術の才能を見抜いた第4魔術師範のアイリスは彼女の保護者となってくれたものの、他の面々からはイクシアの密偵ではないかと疑われてしまい、イレーヌは孤立を深めていきます。

そんな中で、少女が連続して失踪するという事件が発生。アイリスらの制止を振り切って事件の捜査に臨んだイレーヌが出会ったのは、またしても恐るべき陰謀を企む者たちでした。闘いの中で魔術の才能を花開かせていくイレーヌは、大切なものを守れるのでしょうか。そして兄リーフとの関係はどうなっていくのでしょうか。

なかなか複雑な展開になってきました。2つの相異なる国家は、どちらが善でどちらが邪というものではないのですが、立場を明確にしきれない者にとっては、居場所を見つけるのは難しいのです。イクシアには愛するヴァレクが、シティアには家族が、そして両国に友人を持つイレーナは、自分の進む道を見出していかなければなりません。物語は第3巻へと続いていきます。

2018/5