りぼんの読書ノート

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最果てのイレーナ(マリア・V・スナイダー)

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毒見師イレーナイレーナの帰還に続く「スタディ三部作」の完結編です。魔術が存在する中世的な架空世界を舞台として、魔術を否定する清廉な革命国家イクシアと、魔術師が支配する自由国家シティアの架け橋となろうとするイレーナですが、彼女を悪夢が襲います。

イレーナが持っているとされる「霊魂の探しびと」としての力は、かつて世界を大混乱に陥れた歴史書に記録されており、人々から不信感を抱かれるのですが、それだけではありません。彼女の力を手に入れようとする者たちが暗躍し始めるのです。

イレーナが操ることができない炎の力で、彼女を屈服させようとしている「炎の編み機」とは誰なのか。「魂の盗びと」とはどのような存在なのか。魔力に依存症があることに気付き、自らの中にも潜んでいる「力への欲望」を封印しようとしているイレーナですが、いやおうなしに闘いに引きずり込まれていってしまいます。

このシリーズの魅力は、過酷な状況に追い込まれた普通の少女が、必死になって生き延びようとする泥臭さにあるのですが、類まれなる魔力を身につけたイレーナは、もはや普通の少女ではありませんね。それでも自分の不完全さを知りつつも、愛する者たちを守ろうとする献身的な姿には心惹かれます。

はじめは正反対の世界として描かれたイクシアとシティアが、本質的には異なっていないことがラストで明らかにされますが、まだ謎は多いですね。続編の「ソウルファインダー三部作」があるとのことですので、楽しみに待ちましょう。

2018/5