りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2019/1 恥辱(J・M・クッツェー)

「今年もたくさん読むぞっ!!」などとメッセージを書いてしまったのに、年末年始休暇の間にほとんど読書が進みませんでした。特に忙しかったわけでも、疲れていたわけでもないのですが、何となく気乗りしなかったのです。おかげで箱根駅伝をじっくり見てしまった次第。このツケは、2月にアップする読書レビュー数に跳ね返ってくることになります。


1.恥辱(J・M・クッツェー)
南アフリカ出身のノーベル賞受賞作家の代表作です。女学生へのセクハラがもとで離職した中年大学教授が、ひとり娘が生活する農園に転がり込んで、南アフリカの田舎の現実に圧倒されていきます。アパルトヘイトの終焉にもかからず、次の時代が見えてこない重苦しい世界が描かれます。そして彼が「恥辱」と感じたこととは何だったのでしょう。

 

2.民宿雪国(樋口毅宏)
雪深い片田舎で寂れた民宿を営みながら自己流の絵を描いていた老人が、なぜ国民的画家として著名になりえたのか。その背後には残虐な犯罪も、大掛かりな詐欺もあったのですが、最後に見えてきたものは意外にも「純愛」でした。政治的に微妙なテーマを含むため、長く出版されなかったという事情も含めて「奇書」と呼ばれるにふさわしい作品です。

 

3.U(ウー) 皆川博子)
これも「奇書」の部類でしょう。第一次世界大戦時のドイツUボート乗組員の物語が、なぜ17世紀初頭のオスマン帝国の奴隷の物語と関係しているのか。「地底」と名付けられた章で始まった精神と肉体の遍歴が、「Uボート」と名付けられた章の中で解放されていく過程はスリリングです。

 

 

2019/1/30