りぼんの読書ノート

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幽霊海賊(ウィリアム・ホープ・ホジスン)

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100年以上も前、ウェルズやドイルと同時代に「ホラー小説」を書いていた著者の、「ボーダーランド2部作」といわれるシリーズの1作です。

本書で扱われる「異世界との境界」は海。サンフランシスコで仕事にあぶれていた主人公が乗り組んだ船には、気味の悪い噂が流れていました。船内で見えるおぼろな影。ほどかれてしまった帆。船の周りを包む霧。絶え間なく付きまとってくる幻の船影。異変を訴えても信じてもらえないまま、不気味な雰囲気だけが高まっていきます。そしてついに・・。

主人公の水夫は、「この船は何かの拍子に異世界と繋がってしまったのではないか」と推理を述べますが、種明かしはありません。そして、説明のつかないことほど怖いものはないのです。読者を焦らしながら、ゆっくり恐怖を高めていく手法が、100年以上も前に使われていることにも感心しました。

2016/11