りぼんの読書ノート

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エターナル・フレイム (グレッグ・イーガン)

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「空間軸と時間軸を交差させる」という物理法則を導入することによって、新しい世界を生み出してしまった「直交宇宙シリーズ」の第2作です。本書では、第1作のクロックワーク・ロケットで、宇宙的規模での天体消滅から母星を救うために超巨大宇宙船「孤絶」で深宇宙へと飛び出した者たちの数代後の物語が描かれます。

中心となるのは、物理学者カルラと生物学者カルロの夫婦。カルラは「鏡面曇化」という地味な現象から、光と物質の新たな法則を見出しつつあります。折しも「孤絶」の航路を近接する軌道を通る小惑星の捕獲チームに加わったカルラは、天文学者タマラらの協力を得て、新たな理論を応用する機会を得ることになります。どうやら、通常の光子に対する反光子を利用して巨大なエネルギーを生み出せそうな気配。

一方で夫のカルロは、食料不足に対する人口増加の課題に取り組んでいます。彼らの種族の出産は、雌が4体に分裂することであり、雌の死と人口の倍増をもたらすもの。雌の分裂を2体に押しとどめようとしたカルロらの研究は、種族全体を対立に巻き込みかねない成果を生み出してしまいました。彼が開いた母子出産の可能性は、保守勢力にとって容認できるものではなかったのです。

とまあ、こんな話だと思うのですが、難解でした。とりわけカルラが研究する「物理学パート」の難解さは群を抜いています。なんとか理解しようとしたのですが、「理論的証明」部分は、ほとんどギブアップ。どうも、この世界の量子論を理解しておかないと無理なように思えます。

ともあれ、その後の全てを後世の発見・発明に期待して母星を飛び出した「孤絶」が、少なくとも帰還可能なエネルギー原を得たことで、物語は一歩前進。最終巻の物語は、どのような物理学的サプライズとともに展開されるのでしょう。

2016/11