りぼんの読書ノート

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ヒーローインタビュー(坂井希久子)

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大阪に転勤してきて、関西の阪神ファンの生態にも少々詳しくなりました。あるファンは「シーズン開幕前が一番楽しい」と言います。チームと個人の成績について希望的に観測できるのが開幕前であり、開幕後は夢の実現確度が下がっていくだけだというのです。もちろんそれでも、阪神ファンをやめることなどありえないのでしょう。

本書は、阪神タイガースに入団したものの、伸び悩んで10年間で退団した元高校生スラッガーの仁藤全、通称「ゼンさん」を中心にした物語。球界では注目されることなく引退したゼンさんですが、彼には彼にしかない人生がありました。ゼンさんをよく知る人たちのとっては、彼こそがヒーローだったのです。本書のタイトルの意味は、「自分のヒーローについて、インタビューに答える」という意味だったのですね。

ゼンさんについて語るのは、後にゼンさんの恋人になる理容店主の庄司仁恵、ゼンさんを勧誘したスカウトの宮澤秋人。ゼンさんの後輩で阪神のエースになる佐竹一輝。なぜか互いの転機で対決したドラゴンズのベテラン投手の山村昌司。ゼンさんの出身高校の野球部時代の友人の鶴田平。そして、最後に登場するインタビュアーとは誰なのでしょう。

「記憶に残る選手になること」の意味を、あらためて考えさせられてしまいます。そして、自分にとっての「記憶に残る選手」とは、誰なのかも。

2016/11