りぼんの読書ノート

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アルゴ(アントニオ・メンデス)

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1979年11月。革命直後のイランで発生したアメリカ大使館占拠事件の際に、密かに大使館を脱出してカナダ大使館に匿われた6人のアメリカ人職員がいたのです。日に日に危険が高まる彼らを救出するためにCIAがとった作戦は、奇抜なものでした。元CIA職員が語る実話は、映画化されて2012年のアカデミー作品賞を受賞しました。

スパイ小説や映画で「秘密の出国」というと、自動車のトランクに潜んで国境を越えるとか、沖合いで待つ潜水艦に小船で向かうとか、砂漠や山脈を徒歩で越えるとかの劇的な展開を考えてしまいますが、一番確実なのは、普通に空港から民間機で飛び立つことだそうです。それ以外の作戦では、見つかった際の言い逃れが不可能とのこと。

もちろん、偽装は必要になります。このケースにおいても、イランを訪問したカナダの英語教師や栄養学研究者として出国する案が最後まで残っていました。それにしても、SF映画のロケ地探しにイランを訪れたハリウッドの映画人というのは、凄いアイデアです。

「アルゴ」とは、この作戦のために準備された架空のSF映画です。「スター・ウォーズ」の大ヒットの記憶も新しい時代。映画関係者なら、革命直後のイランですら訪問しそう。準備するのは偽のパスポートやキャリアだけではありません。ハリウッドで実際の映画関係者を雇って偽プロダクションを設立し、映画のポスターを作製し、映画製作の噂を流し、かなり本格的なのです。

映画では、それらの偽装も見破られそうになる中での間一髪の脱出となっていましたが、実際にはそこまでギリギリではなかったようです。しかし文字通り生命がかかっているわけですから、迫力も緊張も並大抵のものではありません。「事実は小説より奇なり」を地でいく作品です。

2014/3