りぼんの読書ノート

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羅生門 蜘蛛の糸 杜子春(芥川龍之介)

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なんとも懐かしい作品です。以前に読んだのは、中学生の頃でしょうか。

まずは、本書に含まれている作品を列挙しておきましょう。「羅生門」、「鼻」、「芋粥」、「或日の大石内蔵助」、「蜘蛛の糸」、「地獄変」、「枯野抄」、「奉教人の死」、「杜子春」、「秋」、「舞踏会」、「南京の基督」、「薮の中」、「トロッコ」、「雛」、「六の宮の姫君」、「一塊の土」、「玄鶴山房」、「点鬼簿」、「河童」、「歯車」の全21編。

下人に託した生きる醜さ、禅智内供の自尊心、五位の受けた圧迫感、犍陀多や芭蕉門下のエゴイズム、絵師良秀の狂気、ろおれんぞの自己犠牲、杜子春の人間味、信子の寂寥感、明子やお鶴や良平の忘れがたい思い出、「藪の中」に埋もれた真相、姫君の哀れさ、お住の感じた情けなさ・・。

さまざまな文体や幅広い知識を駆使しながらも、どの作品でも文章は簡潔であり、主題は明快です。中学生には早すぎると思える部分も多いのですが、中学生にも理解できる作品になっているというのが、まず凄いこと。実際、大半の作品は覚えていました。

「玄鶴山房」以降の4編が、「晩年」に分類される作品でしょう。初期・中期の作品に特徴的な変幻自在な煌びやかさは影を潜めて、作者の苦悩がストレートに描き出されていきます。当時の文壇からは好評だったようですが、個人的には好みではありません。もちろん「私小説」とは一線を画しており、「構成された小説」であるには違いないのですが、主題がきつすぎるのです。

本書は書店から、「機智と諧謔と博識を駆使し、新鮮な抒情、傑出した虚構、そして明晰な文章で今なお人々を魅了してやまない、みごとな短篇小説を書き残した不世出の天才」と紹介されています。やはり一般的には、このように評価される作家なのでしょう。

2014/3再読