りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

黒い季節(冲方丁)

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著者18歳のときのデビュー作です。

裏の世界であるヤクザ社会と、もうひとつ裏の世界である陰陽の一族の3組の出会いが、物語を加速させていきます。未来を望まぬヤクザ「藤堂」には、記憶を喪い未来の鍵となる美少年「穂」。全てを壊して未来を手にしようとする男「沖」には、彼と宿命で結ばれる乾宮警察の異能の女「蛭雪」。父が残した呪詛の絵を探す少年「誠」には、穢れた力を使って鬼を操る女「戊」。

対決の時を前にして判明していくのは、呪詛の絵に隠された出生の秘密。復讐の鬼となった男が封じた己の鬼性。陰陽の世界を司る「中央」と「地方」の役割と、それぞれに伝わる秘儀。そして、ついに鬼の世界が制約から解き放たれ、全てが喰い荒らされそうになるのですが・・。

創作への強い激情にかられて書かれた本書は、「疾走感」を感じさせるものの、もちろん「若書き感」に溢れています。しかし、「異能の者が振るう暴力」との点でマルドゥック・スクランブルに、「陰陽と暦の繋がり」の点で天地明察へと続く、先駆け的な作品であると言えるでしょう。

2014/3