りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

言語都市(チャイナ・ミエヴィル)

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地理的に同一の場所にある2つの都市国家を描いた、前著都市と都市以上に異質な世界です。

宇宙の裏側に存在する「イマー」という空間を利用した宙間旅行とか、有機物や生物を駆使した異星での生活などのガジェットは理解の範囲内ですが、重要ではありません。理解困難なのは、辺境惑星の先住種族アリエカ人の特殊な言語です。口に相当する2つの器官から同時に発話されるという特殊な構造を持ち、真実しか語れないという、わけのわからない言語。「毎週泳ぐ男のように」という直喩を使うためには、「毎週泳ぐ男」を用意しておかねばならないのですから。

植民者たちはアリエカ人と交流するために、一卵性双生児をクローン生成し、同時発話である「ゲンゴ」を習得させた「大使」を起用して外交を行っています。しかし新任大使エズ/ラーの言葉は、なぜか麻薬のようにアリエカ人の間に浸透していき、大崩壊の危機を引き起こすことになるのでした。

この星の植民社会に生まれ、宇宙飛行士となって惑星を飛び出しながら、言語研究のために夫と一緒に戻ってきた女性アヴィスがこの事態に立ち向かうというのが基本プロットなのですが、ここまで理解するのが大変でした。とにかく説明がなさすぎです。アヴィスがある「直喩」であったことが、最後になって重要な役割を果たすのですが、そもそも人間が「直喩」と言われても・・。

それでも、終盤の展開は怒涛です。それまで訳のわからなかった全てのことが、結末に至る伏線となっていることを理解できたときには、ヘレン・ケラーの心境がわかるように思えるほど。そして、言葉と文字と嘘の関係について、深く考えさせられてしまうのです。

2014/3