りぼんの読書ノート

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天冥の標8.ジャイアント・アーク〔PART2〕小川一水

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第8巻の〔PART1〕は、第1巻のメニー・メニー・シープとほぼ並行していましたが、〔PART2〕に至ってようやく、物語が先に進み出します。

西暦2803年、「咀嚼者(フェロシアン)」の侵入によって首都を失った人類は、評議員エランカを新民主政府の大統領として、戦線の再構築を開始。政府軍と反乱軍は一体となって戦闘に臨み、侵略者が決して無敵ではないことを証明しますが、首都奪還は容易ではありません。とりわけ、「咀嚼者」の皇帝ミヒルの意図が全く分からないことが不気味です。

カドム、イサリ、ラゴス、ユレイン、オシアンらは、もはや人口の地底都市であることが判明した植民地の「出口」を求めて、上部へと登っていきます。失われた技術によるロボットたちが守る「天井」の上には、何があるのでしょうか。どうやら、ドロテア・ワットを内包した「準惑星セレス」は、300年の間に太陽系を飛び出していた模様。タイトルの「ジャイアント・アーク」とは、二重連星の間にかかる巨大なコロナのことなのです。

瀕死の重傷を負ったアクリラは、オムニフロラに憑依された旧型ロボット・カヨによって再生されますが、カヨの口から出た「質問」は、思いがけないものでした。光の洪水の中に立ったアクリラが、仲間たちとの再会を果たす日は訪れるのでしょうか。まだまだ伏線として潜ませていた材料はありそうです。

個体では力のない「石工(メイスン)」が、新女王クルミの登場によって、集合体としての知性を働かせるようになったことは、特筆しておくべきでしょう。もともと、「オムニフロラ=ミスチフ」の意表を衝くほど高い技術を持つ種族です。次の展開にも大きく関わってくるのでしょう。

2015/5