りぼんの読書ノート

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天冥の標8.ジャイアント・アーク〔PART1〕小川一水

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帯に「すべての因果がめぐる第8巻」とあったように、ようやく物語は第1巻メニー・メニー・シープの地点に戻ってきました。

しかし、第2巻から第7巻までの「宇宙史」を読んだ後で見る景色は、当然ながら大きく異なっています。「医師団」「宇宙軍」「恋人」「亡霊」「石工」「議会」「救世群」というグループの、それぞれの時代を担ってきた人々の系譜が、物語に新たな意味をまとわせてくるのです。

「咀嚼者(フェロシアン)」となって人類を滅亡の淵に追い込んだミヒルは、300年後もまだ健在でした。彼女によってずっと眠らされていた姉のイサリは、逃亡してセナーセーへ。第1巻では登場人物たちから怪物のように思われていたイサリの視点から語られる、人類たちの対立点。

それら全てを覆う全宇宙的な対立点は、既に明らかになっています。人類たちが模索する「共生の道」が、全宇宙的な対立解消の端緒となるのかどうか。おそらく、このあたりが、シリーズ全体の構図なのでしょう。ともあれ、失われた伝承と、継続された恩讐とが、ないまぜになってのせめぎ合いは、まだまだ続きそうです。クライマックスは近づいているのでしょうが・・。

2015/5