りぼんの読書ノート

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天冥の標7.新世界ハーブC(小川一水)

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前巻の宿怨から直接続く巻です。長年の隔離と差別に対する怨みから、冥王斑原種を太陽系全域に撒いた「救世軍」によって、人類社会は絶滅に瀕していました。

小惑星セレスに墜落した恒星船ジニ号から、かろうじて生き残ったアイネイアとミゲラは、シティの地下要塞施設で生きのびていたスカウト仲間と出会うことができました。しかし、そこから送り続ける通信には太陽系のどこからも返答はなく、最悪の予感が彼らを襲います。ここに逃げ込んだ5万2千名が、今では「全人類」なのだろうか・・。しかもそのうち成人は千名しかいないのです。

自治問題。食糧・エネルギー問題。「救世群」の捜索からの施設の秘匿。何よりも生存を優先して、試行錯誤を重ねながら施設の運営を始めた少年少女たちの組織は、次第に専制化していきます。やがて反乱が起きますが、新しいメンバーにいる新しい政体も、結局は姿を変えた専制でしかないのかもしれません。しかし、事態は進展していきます。羊飼いのメララとともにノルルスカインも登場し、「救世軍」から逃れてきたカルミアンも味方につけ、とりあえずは生存を継続させる体制はできてきたようです。

第1巻に登場した、臨時総督(ボースン)、議会(スカウト)、亡霊(ダダー)、救世群(プラクティス)、恋人たち(プロスティテュート)、石工(メイスン)、医師団(リエゾン・ドクター)、宇宙軍(リカバラー)の由来も、メニー・メニー・シープの舞台も、ここまでで解明されました。

しかし残された謎も多いのです。電力問題、重力問題、地下から現れる救世軍の咀嚼者(フェロシアン)。第2巻以降、第1巻の「現在」に至る過程を扱ってきたシリーズですが、次巻以降はいよいよ「未来」へと続いていくのでしょうか。

2015/3