りぼんの読書ノート

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百寺巡礼 第4巻 滋賀・東海(五木寛之)

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五木寛之さんが、TVの企画番組で全国100の古寺を巡礼した記録です。まず第4巻を読んだのは、つい先日、石山寺西明寺を参拝したから。これからも参考にさせていただこうと思います。

「第31番 三井寺 争いの果てに鐘は鳴り響く」
比叡山と袂を分かって以来、比叡山によって7度も焼き討ちを受けた戦禍の歴史の寺です。北政所によって再建された金堂は国宝であり、本尊の弥勒仏は絶対秘仏とのこと。五木さんは、延暦寺三井寺の抗争について、「寛容を失ったとき、小さな相違は許し得ない争点となり、どこまでもエスカレ-トしてしまう」と記しています。

「第32番 石山寺 母の思いと物語に救われる寺」
天然記念物の珪灰石岩の上に立つ、紫式部が「源氏物語」を著したとの伝説が伝わる寺です。ただ、この寺に関して五木さんが特筆したことは、「蓮如と母の物語」のほうでした。

「第33番 延暦寺 最澄の思いが息づく霊」 
京都の鬼門にあって比叡山全域を境内とする巨大寺院は、世界遺産にも選ばれています。最澄を開祖とする天台宗の寺院ですが、法然(浄土宗)親鸞浄土真宗栄西臨済宗道元曹洞宗日蓮日蓮宗)などの名僧が比叡山で修行したことから、「日本仏教の母山」と言われています。五木さんは、「山にはいる」ことの意味を実感できると述べています。

「第34番 西明寺 焼き討ちから伽藍を守った信仰の力」
信長の比叡山焼打ちの被害にあったものの、本堂、三重塔、二天門は焼失を免れるとともに、救済された多くの仏像を持っています。五木さんは、天台宗のお寺なのに浄土真宗の宗祖・親鸞の像が祀られていることに、寛容の精神を感じています。

「第35番 百済寺 生きものの命が輝く古刹」 
1400年前の飛鳥時代聖徳太子の発願による古い寺院ですが、信長の焼き討ちによって全ての堂宇が灰燼となってしまいました。西明寺金剛輪寺と並んで「湖東三山」のひとつです。五木さんは、名前の通り、「亡き故郷を望む渡来人の心に思いを馳せる」ことができる寺と述べています。

「第36番 石塔寺 “石の海”でぬくもりを感じる寺」 
飛鳥時代末期の建立とされる日本最古の石塔は、異国風で異色の存在です。「石の海に、ふとなつかしさのようなものを感じた」という五木さんの感想は一般的なのでしょうか。

「第37番 横蔵寺 最澄と山の民ゆかりの美濃の正倉院
深山幽谷という言葉が似合う山奥の寺について、五木さんは「ふだんは耳にはいってこない自然のなかの音に気づく。これまでにもずいぶん山の寺を回ってきた。しかし、横蔵寺の雰囲気は格別だった」と述べています。

「第38番 華厳寺 人びとが生まれ変わる満願の寺」
西国33カ所巡礼の最後の寺には、笈摺堂(おいずるどう)という、巡礼者の羽織・道具類を奉納する堂宇があります、五木さんは、「あてどない死への旅というのが、そもそも巡礼だったのではないかと思えてくる。一度、死への旅を体験することによって、ふたたび現世に生まれ変わるのであろう」と述べています。

「第39番 専修寺 念仏するこころという原点」
三重県を中心に600の末寺を抱える、「真宗十派」のひとつ「真宗高田派」の本山です。五木さんは、「現代に生きる私たちは、古典というものを伝承するだけでなく、いまの時代のなかで古典を開いていくことこそ大事」と述べています。

「第40番 永保寺 坐禅石で覚えたふしぎな感覚」
夢窓国師が結んだ草庵に始まる禅寺は、山号を虎渓山といい、雲水の修行場である虎渓山専門道場を併設しています。五木さんは「自分が惹かれる場所で、ちょっと目を閉じて合掌してみる」ことを勧めています。

2015/5