今月は、村田喜代子さんの迫力ある2冊がワン・ツー・フィニッシュ。なんと『蕨野行』以来、10年ぶりです。「東雲のストライキ」として話題になった、明治期の遊女たちの決起を描いた『ゆうじょこう』の主人公の少女は、自伝的小説である『八幡炎炎記』の登場人物と重なっているようです。1.ゆうじょこう(村田喜代子)
明治36年、硫黄島から熊本の郭に売られてきた少女は「女紅場」で文字を習い、人間存在について思考をめぐらし始めます。イチの素朴な日記が綴るのは、彼女自身の成長過程であり、妓楼の日常生活であり、「東雲のストライキ」へと至る世相でもありました。人間として生きようとした遊女たちの、パワーに満ちた小説です。
2.八幡炎炎記(村田喜代子)
「製鉄の町・北九州八幡で敗戦の年に生まれ、事情あって祖父母を戸籍上の父母とする少女」といったら、著者自身のこと。主人公の少女ヒナ子の名字が「貴田」という著者の旧姓であることも、後に明かされます。本書は著者の自伝的小説の「第一部」なのでした。どことなく猥雑な活気に満ちた「八幡の町」に生きる、信心深く力強い女たちと、肝心な場面で脆さを露呈するダメ男たちの物語。誰もが少しずつ、溶鉱炉の炎のような情念を持っているようです。
「製鉄の町・北九州八幡で敗戦の年に生まれ、事情あって祖父母を戸籍上の父母とする少女」といったら、著者自身のこと。主人公の少女ヒナ子の名字が「貴田」という著者の旧姓であることも、後に明かされます。本書は著者の自伝的小説の「第一部」なのでした。どことなく猥雑な活気に満ちた「八幡の町」に生きる、信心深く力強い女たちと、肝心な場面で脆さを露呈するダメ男たちの物語。誰もが少しずつ、溶鉱炉の炎のような情念を持っているようです。
3.お爺ちゃんと大砲(オタ・フィリップ)
「死んだはずの祖母がイタリアで生きていた」という謎は、第一次大戦中に祖父がとった奇妙な行動と結びついていました。チェコ人の祖父が開発した巨大大砲は、奥伊戦線のドロミテ山脈中の高地に据え付けられながら、一度も発射されることはなかったのです。メルヘンのように綴られる戦争も、結局は過酷なもの。巨砲のたどった運命は、どことなくチェコがたどった道筋とも似ているようです。
「死んだはずの祖母がイタリアで生きていた」という謎は、第一次大戦中に祖父がとった奇妙な行動と結びついていました。チェコ人の祖父が開発した巨大大砲は、奥伊戦線のドロミテ山脈中の高地に据え付けられながら、一度も発射されることはなかったのです。メルヘンのように綴られる戦争も、結局は過酷なもの。巨砲のたどった運命は、どことなくチェコがたどった道筋とも似ているようです。
【その他今月読んだ本】
・本朝金瓶梅 お伊勢篇(林真理子)
・獣の奏者2.王獣編(上橋菜穂子)
・百寺巡礼 第8巻 山陰・山陽(五木寛之)
・ペルディード・ストリート・ステーション(チャイナ・ミエヴィル)
・本朝金瓶梅 西国漫遊篇(林真理子)
・ドールマン(テイラー・スティーヴンス)
・この世の涯てまで、よろしく(フレドゥン・キアンプール)
・永遠の0(百田尚樹)
・百寺巡礼 第1巻 奈良(五木寛之)
・可愛いベイビー(五十嵐貴久)
・理系の子(ジュディ・ダットン)
・孤高の人(新田次郎)
・ミス・エルズワースと不機嫌な隣人 (メアリ・ロビネット・コワル)
・銀翼のイカロス(池井戸潤)
・風の丘(カルミネ・アバーテ)
・僕僕先生 零(仁木英之)
・出雲の考古学と『出雲国風土記』(古代出雲王国の里推進協議会)
・チェルノブイリから来た少年(オレスト・ステルマック)
・本朝金瓶梅 お伊勢篇(林真理子)
・獣の奏者2.王獣編(上橋菜穂子)
・百寺巡礼 第8巻 山陰・山陽(五木寛之)
・ペルディード・ストリート・ステーション(チャイナ・ミエヴィル)
・本朝金瓶梅 西国漫遊篇(林真理子)
・ドールマン(テイラー・スティーヴンス)
・この世の涯てまで、よろしく(フレドゥン・キアンプール)
・永遠の0(百田尚樹)
・百寺巡礼 第1巻 奈良(五木寛之)
・可愛いベイビー(五十嵐貴久)
・理系の子(ジュディ・ダットン)
・孤高の人(新田次郎)
・ミス・エルズワースと不機嫌な隣人 (メアリ・ロビネット・コワル)
・銀翼のイカロス(池井戸潤)
・風の丘(カルミネ・アバーテ)
・僕僕先生 零(仁木英之)
・出雲の考古学と『出雲国風土記』(古代出雲王国の里推進協議会)
・チェルノブイリから来た少年(オレスト・ステルマック)
2015/6/29