りぼんの読書ノート

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天冥の標10.青葉よ豊かなれ Part 1(小川一水)

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2009年から10年かけて書き継がれてきた全10巻のシリーズが、最終巻に突入しました。ここまでで、800年に渡って牧歌的な生活を営んできた植民星メニーメニーシープは、太陽系に進出した人類のわずかな生き残りにすぎないこと、しかも植民星はすでに太陽系から遠く離れたカルミアンの母星に到達しようとしていること、そこは多様な生命活動を肯定する勢力と、宇宙全体のエントロピーを下げようとする勢力の超宇宙的な一大決戦が行われる最前線であることが判明しています。

女王ミヒルを駆逐したメニーメニーシープは、人類を滅亡寸前に追い込んだ救世軍との和解を成し遂げました。姿は変えられているものの、救世軍もまた人類の一部なのです。しかし、太陽系から合流したニ惑星連合軍も行動をともにするとはいえ、超新星すら武器として用いようとするカルミアンらの前で、人類が何かの役割を演じて、かつ生き延びることが可能なのでしょうか。

本巻ではまず、滅亡の危機に瀕した人類が太陽系の全資源を次ぎ込んで二惑星連合軍を建設し、メニーメニーシープを追わせた経緯が語られます。巨大勢力とはいえ、これは少数の休眠中の人類を除けば、全てAIだったのですね。しかし戦闘的な宇宙種族との前哨戦で勝利を収めたのは、このAIがアンチオックス宇宙軍の遺伝子を継承しているからなのです。

そして本巻のラストで、カルミアから派遣されてきていたミスン族のリリーは、超新星爆発連鎖に代わる驚くべき戦略を発します。「魅力的な種を生むこと」が鍵なのだと。最終巻のPart 2とPart 3は、怒涛の展開ですね、きっと。

2019/6