りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ゴリアテ(スコット・ウエスターフェルド)

イメージ 1

英国海軍が誇る巨大飛行獣リヴァイアサンは、極東戦線で戦うべく、イスタンブールを後にして東に向かいます。しかし、シベリアのツングースカで脅威の光景を目の当たりにし、その状況を引き起こしたという電磁兵器ゴリアテを建設中という天才科学者ニコラ・テスラを同乗させるに至って、最終目的地をアメリカに変更。

大都市を壊滅させる威力を持つというゴリアテは、戦争終結の切り札となるのでしょうか。アメリカの新聞記者に身分をすっぱ抜かれたオーストリア公子アレックはテスラに接近しますが、世界大戦への参戦問題で世論が割れているアメリカでは、英独の謀略がしのぎを削っていたのです。そして、ニューヨーク沿岸に建設されたゴリアテをめぐって、激しい戦闘が起こります。

3部作を締めくくる本書では、「ついに明かされる"胸に秘めていた恋"がお好みの諸氏へ」との前書きと、最後に登場する「ハプスブルク家家訓」とが対になっていますね。ついにデリンが女性であると気づき、彼女への思いに気づいたアレックですが、皇族と平民という身分の差を越えることができるのでしょうか。

新聞王ハーストや実在の花形女性記者、メキシコ革命軍を率いるビリャなども登場しますが、時代の感覚を現わす以上の役割はありませんね。むしろ本筋上は端役ながら、日英同盟のもとで「ダーウィニスト」と「クランカー」が共存している日本の様子が興味深かったですね。工学王の豊田佐吉と、遺伝子改変真珠王の御木本幸吉が「偉人」なのです。それと、獰猛なカッパの群れを率いる海軍の強さも。^^

楽しい三部作でした。アレックとデリンの活躍で第一次大戦が史実よりも早く終わりそうな世界では、第二次大戦が起こらないことを期待します。成年となった彼らがナチスの台頭を阻止するような「続編」もあってもいいのでは?

2014/3