りぼんの読書ノート

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最後の間者(岡田秀文)

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堺を発った小荷駄隊が奇襲を受けたと知った信長から「安土城に潜む間者を一掃せよ」との命令を受けた村井貞成は、子飼いの忍びである蛭沼に捜査を命じます。

一方で毛利家に雇われて織田家の御用部屋に入り込んだ忍びの市平は、危険を犯しながら織田家の情報を繋ぎ役の神谷に送り続けます。そんな中で神谷から受けた不思議な指令は、本願寺攻めの大将である佐久間信盛の失脚を引き起こす大成果を発揮するのですが、かえって村井の注意を引いてしまいます。

物語は「織田家の村井・蛭沼vs毛利家の神谷・市平」という図式で進んでいくのですが、そう簡単ではありません。天下をうかがおうとする織田家には、武田や上杉の間者も入り込んでいたのです。そして、本能寺の変が起きたとき、誰が誰のために働いているのか、全てが明らかになるのですが・・。

光秀の反乱によって巨利を獲た者が全てを仕組んだとの説は、加藤廣さんの信長の棺を待つまでもなく、多くの小説で描かれています。しかし、本書の特色は物語を描いた視点にあるのでしょう。誰のために働いているのかも知らせられずに「駒」として使われた無名の忍びの物語であるからこそ、最後に判明する「真相」の意外性が増したように思えます。

2014/3