りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

おいで、一緒に行こう(森絵都)

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福島原発20キロ圏内のペットレスキュー」の副題通り、避難勧告地域に残されたペットの救出に向かうボランティアの方たちに同行取材を行ったドキュメンタリーです。

動物たちを助けたい一心で被災地に集まってくる、大半が40代の女性たち。裕福でもなく、仕事を抱え、子育てに追われる普通の女性たちが、ゴーストタウンのような避難勧告地域に入っていき、動物の屍骸に心を痛め、放射線量の高さに驚き、時に警察に追い回されたりもしながら、ボランティア活動を続けているというから驚きます。

終わりが見えない。何をやっているんだろうと自問する。何かが変わったという実感も持てない。それでも、「見捨てるわけにいかない」と、「もっと多くの人にこの現実を見てほしい」と活動する女性たちの姿は、著者が当初想定していた「1泊2日の同行取材。原稿用紙数10枚」の予定を変えさせました。

それはまた、著者が「どんなスタンスで書くのか。どこまでありのままを書くのか」を自問した過程だったようです。「ノンフィクションにおいて、書き手が最後に拠って立てるのは、自分自身のフェアネスだけ」と信じて「情報の取捨選択をせずに正も負も等しく書きしるした」、著者渾身の作品です。

2014/2