りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

権力と栄光(グレアム・グリーン)

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1930年代のメキシコ。辺境の貧しい州に樹立された共産主義革命政権は、教会を弾圧して、神父を捕え始めます。そんな中で、酒に溺れ、私生児までもうけてしまった破戒司祭、通称「ウィスキー坊主」は、州の中で唯一の神父となってしまっていたのです。

貧しくも信心深い村人たちに助けられながら逃亡を続ける神父を追うのは、教会を悪と信じている警部です。彼を支えているのは、貧しい者を救うのは「信仰」ではなく「秩序」であるという信念。両極にある神父と警部が、深いところで心を通じ合わせているように思えてくるから不思議なもの。神父の逮捕を焦る警部が村人を人質にとって殺害を始めたとき、神父は安全な隣の州にたどり着こうとしていたのですが・・。

戒律を冒した神父はそれでも神聖なのでしょうか。神父を罠にかけた混血児は何を求めていたのでしょうか。罠の存在を知りつつ、犯罪者の告解を聞くために戻った神父は何を考えていたのでしょうか。何より、神父の「復活」を案じさせるラストは何を意味しているのでしょうか。

スコット・トゥロー出訴期限のラストにつけた「歴代ベスト10ミステリ」に含めた作品です。通常の意味では、決してミステリではないのですが・・。

2014/2