りぼんの読書ノート

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ダルタニャン物語 ⑪剣よ、さらば(アレクサンドル・デュマ)

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ルイ14世と、世に知られていない双子の弟フィリップを入れ替えるという、アラミスの大陰謀はほとんど成功するところでした。ではなぜ失敗したのでしょう。ルイ14世を救ったのは、これまで悪役として描かれてきた財務官フーケの意外な忠誠心だったのですが、彼の忠節は報われません。フーケ逮捕を命じられたダルタニャンはフーケに逃亡を促すのですが・・。

そして「鉄仮面」に関連する緊迫の物語は、ベル・イール要塞での戦闘というクライマックスに向けて進んでいきます。ダルタニャンをアラミスやポルトスと直接対決させなかったのは、登場人物に対する作家の思い遣りなのでしょうか。

ポルトスの死が読者を泣かせます。お人よしのポルトスがアラミスの大陰謀に加担したのは真実の友情のためという真心あふれる遺言こそが、三銃士物語の原点であり、これには冷徹なアラミスでさえも心を動かされざるをえません。

時代の変化を象徴するかのように、四銃士は次々と退場していきます。傷心のラウルはアラビアで客死、アトスは息子の後を追うように眠りにつきます。そして念願の元帥の地位を得て、対オランダ戦の総司令官として戦闘に赴いたダルタニャンの胸を貫く一発の銃弾・・。

絶対王政に向かうフランス王室が、破天荒な武人の忠節を必要とした時代は、この後二度と戻ってはきません。このあたり、徳川政権の成立とともに古武士が消え去った日本の歴史と共通するものがあるように思えます。

途中で中だるみ感はあったものの、剣と恋愛と友情と陰謀と、波瀾万丈の生涯の果てに終わるダルタニャンの物語は、最後まで楽しめました。やはりデュマは素晴らしい!

2011/9