りぼんの読書ノート

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ダルタニャン物語 ⑥将軍と二つの影(アレクサンドル・デュマ)

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第2部「20年後」からさらに10年。第3部「ブラジュロンヌ子爵」は、太陽王ルイ14世の時代が始まろうとする中での、四銃士の最後の活躍の物語。主人公ダルタニャンは50歳を超え、最年長のアトスは60歳になっていますが、華々しさでは第1部に負けていません。

この巻では主に2つのストーリーが展開されます。ひとつは、ルイ14世が自立するまでの物語。宰相マザランの姪マリーとの結婚を断り、スペイン王女との結婚を決心した時点で、ルイ14世の自立はなったのでしょう。マザランの遺言は「今後宰相を用いないように」という意外な忠告でしたが、財務卿の
要職を務める権力者フーケとの闘いが若き皇帝を待っています。

でも最高に面白いのは、イングランドの王政復古を実現させたダルタニャンの活躍です。クロムウェルによってイングランドを追放されていたチャールズ2世は、宰相マザランに王位奪還の助力を求めますが断られてしまいます。

その様子を聞いていたダルタニャンは、銃士隊副隊長を辞任して個人の資格でチャールズ2世の支援を決意。クロムウェル亡き後、モンク将軍とランバート将軍が対立していたイングランドに乗り込んで、優勢だったモンク将軍をオランダに拉致してしまうんですね。立憲君主制による統治の利を悟ったモンクは、チャールズ2世を復位させるのです。

やはりチャールズ2世のために単独行動で、チャールズ1世が遺した財宝を取り戻すため、モンクを訪問していたアトスの高潔な人格と、ダルタニャンの忠誠心は報われるのです。しかし、チャールズ2世の薄幸の妹・アンリエット姫が、この後フランス王室をかき乱すことになろうとは・・。

この巻に登場しなかったアラミスとポルトスの意外な企ては、次巻で明らかになります。第3部のタイトルになっている「ブラジュロンヌ子爵」こと、アトスの息子・ラウルはなかなか出番が来ませんね。

2011/9