りぼんの読書ノート

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ルパン傑作集1.813(モーリス・ルブラン)

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瀬名秀明さんの大空のドロテがルパン像を再構成する試みのようですので、第2巻を読む前に復習しておこうと思い、新潮文庫版のシリーズを読んでみることにしました。「ホームズ」と同様に、「ルパン」もジュブナイル版の一部しか読んでいなかったのです。「傑作集」ですが、これでも全10巻ですから十分でしょう。ただしシリーズの順番は、記述時期順でもルパンの年代記順でもありません。

「ダイヤモンド王」と呼ばれる大富豪ケッセルバック氏が、全ヨーロッパの運命を賭けた重大秘密を握ってパリに出てきた夜に、何者かに刺殺されてしまいます。嫌疑がかけられたのは、氏が殺害される直前に会見したというルパンでした。しかし、パリ警察の保安課長ルノルマンは「ルパン犯人説」に異を唱えます。果たして真犯人は「LM」と名乗る謎の人物の模様。現場に残されたレッテル「8・1・3」の謎を巡って、ルパンとルノルマンとLMによる三つ巴の死闘の始まりです。

謎を解き明かす鍵であったピエール・ルデュックという人物はあっけなく病死。ルパンは貧乏詩人のジェラール・ポーブレを追い詰めてピエールの替え玉に仕立て上げ、なぜかジュヌビエーヌという女性と結婚させようとします。実は彼女は、ルパンがかつて愛した女性の忘れ形見のようなのですが、自分の価値観による幸せを押し付けていいものなのか・・。

それはさておき、本書はルパンとルノルマンの2人の視点から交互に綴られていくのですが、ルノルマンは途中で敗北。しかし最後に驚愕の秘密が明らかにされます。これって・・反則じゃん。影で暗躍していたセルニーヌ大公はルパンの変装だとわかっているのですが、まさかここまでとは!

本書の『813』と次巻の『813続』は、もともとひとつの物語だったものが「ルパンの二重生活」と「ルパンの三つの犯罪」に分冊化されたものとのこと。道理で「8・1・3」の謎も「LM」の正体も、本書の中で決着がつかなかったわけだ。とりあえず次巻は必読です。

2013/2