りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ルパン傑作集2.813続(モーリス・ルブラン)

イメージ 1

813の続編では、大富豪ケッセルバック氏の遺した重大秘密をめぐって、ルパンと謎の人物「LM」の間で死闘が繰り広げられます。前巻の最後で偽装も暴かれ、警察に囚われてしまったルパンでしたが、大胆にも獄中から重大秘密の断片を新聞にリークし、いずれ公表すると予告。ついに秘密の関係者であるドイツ皇帝を動かすに至ります。

重大秘密とは、ドイツ帝国内に領地を有する王侯の末裔に関するものであるだけでなく、ドイツ・フランス・イギリスの3カ国による「密約」の存在だったのですね。秘密の公開を恐れるドイツ皇帝の命を受けて機密文書の捜索を開始したルパンでしたが、「LM」は常に彼の先回りをして冷酷に手がかりを消していました。

タイトルの「813」とは、文書を隠し場所を空けるためのからくり時計に関する暗号であり、「APO ON」の文字は「Napolleon」を示していたのですが、「LM」は秘密を握っていた口の利けない少女イジルダまで手にかけてしまうのです。果たしてルパンは「LM」に打ち勝つことができるのでしょうか・・。

『813』の後半部分である本書は「ルパンの三つの犯罪」として分冊化されましたが、これは彼が図らずも犯してしまったケッセルバック氏の未亡人であるドロレスの殺害、無罪のレオン・マルエの死刑執行、王侯の身代わりに立てようとしたピーエル・ルディック(ジェラール・ポーブレ)の自殺を指しています。決して殺人は行わなかったルパンは、自責の念にかられることになるのです。

3人の死に責任を感じて「わしはあらゆるものに打ち勝ちながら敗れ去った。運命がわし以上に強かった」と嘆き、全てを与えようとした愛娘ジュヌビエーヌに父親の名乗りをあげることができなかったルパンは、ドン・ルイス・ペレンナの変名を用いてアルジェリアフランス外人部隊に入隊することになるのですが、これはまた別のお話。

ところで本書を読むと、ルパンが自信家で、見え張りで、惚れやすく、センチな男だということがよくわかります。「ルパン三世」は、初代ルパンのキャラの一部をしっかり引き継いでいたんですね。^^

2013/2