りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

大空のドロテ 1(瀬名秀明)

イメージ 1

「怪盗ルパン」の生みの親ルブランによる『綱渡りのドロテ』は、非ルパンシリーズとされているとのことですが、瀬名さんは「ドロテとルパンの関係」を軸にした再構成を試みています。第1巻でのルパンの登場場面はありませんが、影の主人公はルパンです。

1919年。フランス・ノルマンディーの丘にやって来た飛行機乗りの少女ドロテの手には、金色のメダルが握られていました。どうやらそれは、プランタジネット家の財宝への手がかりと言われる5枚のメダルのうちの1枚だというのです。ドロテはそれをどこで手に入れたのでしょうか。そしてドロテとメダルを狙う疣鼻の老人ムッシューVとは何者なのでしょうか。

ロボレー城で窮地に陥ったドロテを救った飛行機技師の息子ジャンは、彼女を追ってエトルタへとやってきます。メダルの1枚を保有しているエトルタ館主ポレ氏のもとに、死亡したと思われていたルパンから盗難予告が届いたというのです。ここは、かつてルパンが天才少年イジドール・ボートルレに『奇岩城』の秘密を暴かれた場所なんですね。

かくしてエトルタに事件の関係者が集まり始めます。11年前の「奇岩城事件」で無能扱いされたエトルタ憲兵隊のウールブレークは名誉回復を賭け、ルパンの一夜限りの花嫁だったブルボン・コンデ公の娘アンジェリクは修道女マリー・オーギュストへと姿を変えて。さらには、イギリスの推理作家チェスタトン氏や、やけに事情に詳しいベルギーの新聞社特派員ジョゼフ(彼の正体はイジドール?)や、もちろんムッシューVもドロテもジャンも一堂に会するのです。果たしてルパンは現れるのでしょうか。それと「虎の牙事件」との関係は?

エトルタの孤児院で育ったというドロテはルパンの娘のようですが、では母親は誰なのでしょう。ルパンに愛を捧げられたことがあるクラリスなのか、クロティルドなのか、ソニアなのか、レイモンドなのか、それともアンジェリクなのか。おそらくドロテの誕生秘話も、少なくとも読者が想像できるくらいには語られていくのでしょう。

しかし大昔に断片的に読んだルパンの物語のことは、ほとんど記憶から脱落しています。本書の続編を読む前に「ルパン・シリーズ」を再読しておいたほうが良いかもしれません。シリーズの全訳は偕成者とポプラ社から出版されているようですが、全部は無理かな。新潮文庫の「ルパン傑作集」なら全10巻ですから、この機会に纏めて「大人読み」してしまいましょうか。

2013/2