りぼんの読書ノート

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みをつくし料理帖7 夏天の虹(高田郁)

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シリーズ第7作になります。
前作で、いつも適切なアドバイスをしてくれる常連客の小松原様こと御前奉行の小野寺数馬からのプロポーズを受け、武家に嫁ぐ決心をした澪でしたが、料理の道を全うしたいという思いとの間に心は揺れ動きます。「迷った時には、自身の中で揺るぎない心星(北極星)を探しなさい」という源斉先生の言葉に従おうとした澪でしたが・・。

「冬の雲雀-滋味重湯」
澪の心の動きを見透かしたかのように、年末の料理番付には「つる屋」の名前はありませんでした。そういえばこの1年、誰か特定の人のために考案した料理はあっても、お店の一般のお客様のことが頭の中から抜け落ちていたのかもしれないと反省する澪。でも、身近なところで病人がでたら、おいしい重湯を作ってしまうのが彼女なんですね。

「忘れ貝-牡蠣の宝船」
初心に戻った澪が考案した牡蠣と昆布の組み合わせは絶妙で、お客も喜んでくれました。しかし、料理の道を選んでおきながら小松原様を諦めきれない澪に聞こえてきたのは、小松原様が良縁を受けたという知らせ。全ては自分の身勝手の結果なのにと思いながらも、澪は苦しみます。なんて愚かしく、情けない・・と。

「一陽来福-鯛の福探し」
心の苦しみが澪の味覚を奪ってしまいます。吉原の又次の助けで「つる家」の営業は続けられますが、これは料理人にとっては致命的。源斉先生は、病に打ち勝とうとする身体の力を信じよと言うのですが・・。でも、道具や器を研究するとか、そういう時でなければできないこともあるんですね。

「夏天の虹-哀し柚べし」
家族的な「つる家」で働いたひと時は、吉原育ちの又次にはかけがえのない時間だったようです。しかし、又次が吉原に戻るという約束の日に、吉原炎上という悲劇が起こります。幼馴染の野江ことあさひ大夫は無事なのでしょうか。又次が遺してくれた柚べしを味わって、澪は味覚が戻ってきたことを感じるのですが・・。

「雲外蒼天」である澪は、まだ先の見えない雲の中にいるようです。

2013/2