りぼんの読書ノート

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みをつくし料理帖6 心星ひとつ(高田郁)

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両親も奉公先も水害で失って、大阪から江戸に出てきた女性料理人の澪を主人公とするシリーズ6作めでは、彼女に大きな転機が訪れます。ひょっとして澪ちゃん、「モテキ」に入ったかしら?でも、素直には喜べないことばかりなんですね。

「青葉闇-しくじり生麩」
澪ちゃんの前に「モテキ」に入ったのはご寮さんの芳でした。客の男性に言い寄られちゃうんですね。お金持ちでいい人のようなのですが・・。生麩を作ろうとして失敗続きの澪は、もち米を入れるという工夫を聞いて試してみますが、客の反応はイマイチです。逆に一流料亭の料理人から、料理人として欠けているものがあると指摘されてしまいます。

「天つ瑞風-賄い三方よし
澪の料理を気に入った吉原の楼主・伝右衛門から、吉原にて天満一兆庵を再建しないかとの話が持ち込まれます。一方で澪をライバル視している登龍楼の采女宗馬からも、須田町の支店を格安で売るとの話が来るのですが、こちらには裏がありそうです。でも澪は、客の喜ぶ顔を見て成長してきた料理人なんです。

「時ならぬ花-お手軽割籠」
町内でボヤが相次いで火の扱いを午前中だけに制限されてしまいます。料理屋には致命的ですが、澪は割籠(弁当)を売り出すことを思いつきます。一方で、澪が密かに身分違いの思いを寄せてきた小松原こと小野寺数馬の妹の早帆と母の里津から、嫁に迎えたいとの誘いが来るのですが・・。

「心星ひとつ-あたり苧環
小松原本人からもプロポーズを受けて「はい」と応えた澪。本当ならウキウキのゼクシィ状態なのに、世話になってきたつる屋の種市やご寮さんへの思い、幼馴染みの野江(あさひ大夫)との約束、そして料理への想いなどが相まって澪は悩み続けます。そんな澪に源斉先生は「迷った時には自身の中で揺るぎない心星(北極星)を探しなさい」との言葉をかけてくれるのですが・・。

ご寮さんの思いが、行方不明になった息子と澪を添わせて天満一兆庵を再建することにあるとは意外でした。でも澪は、病床の里津を失望させ、早帆の好意を踏みにじり、何より小松原との人生を諦めてまでも料理人を続けるのでしょうか。

巻末に著者へのQ&Aがついています。高田さんは、本書に登場する料理を全て作っているんですね。^^

2011/12