りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

スパイ・ライン(レン・デイトン)

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自らが所属するイギリス情報局に追われる身となったバーナードは、ベルリンで幼馴染だった友人ベルナーにかくまわれますが、あっさりと居場所をつきとめられてしまいます。しかも、あっさりと復帰が認められてしまうのですが、もちろんこれには裏がありそうです。そして、切手のオークションという古典的な手段でバーナードに接触してきた相手は意外な人物でした。

ここに至って、妻フィオーナのモスクワ亡命が偽装であったことが明らかになり、彼女の帰還が近いことも判明するのですが、今度はその方法が問われてきます。単純に復帰してしまうと彼女が得た情報が無効にされる可能性が高いため、死亡や自然な失踪を偽装する必要があるんですね。

情報局の考え方に通じているバーナードは恐るべき可能性を思いついてしまうのです。一番簡単な方法とは、フィオーナを本当に殺害してしまうことではないのか・・と。そもそも妻の偽装亡命を夫に知らせないほど冷血な機関なのですから。もっとも、夫の真剣な狼狽こそが偽装を完璧にして妻を守ったわけなのですが・・。

ここにきて、さまざまな伏線が生きてきます。フィオーナの妹で放埓なテッサの存在や、彼女がつきあっているバイエルン王室大公に麻薬取引の嫌疑がかけられていることや、サーケトルという元犯罪者の暗殺者の存在や、バーナードの親友ベルナーのホテル経営などが意味を持ってくるんですね。果たして最後の「大作戦」とは・・。

しかし、残された謎も多いのです。「ベルリンの壁崩壊後」に書かれたというシリーズ最終作スパイ・シンカーでは、フィオーナの果たした役割も明らかになるようですから期待しましょう。

2013/2