りぼんの読書ノート

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スパイ・フック(レン・デイトン)

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レン・デイトンのスパイ小説の人気が、日本ではル・カレより遥かに下なのは何故なのでしょう。どちらもリアリスティックでありながらドラマチックな展開であり、遜色ない面白さだと思うのですが。とはいえ、かくいう私も、イギリス情報局員のバーナード・サムソンを主人公とする『ベルリン・ゲーム』『メキシコ・セット』『ロンドン・マッチ』の3部作の続編である本書を長いこと未読にしていたので、他人のことは言えません。

イギリス情報局の上級職員であった妻フィオーナのモスクワ亡命という衝撃の事件から3年後、雑用的な仕事しか割り当てられないバーナードはくすぶり続けているのですが、私生活の面では、彼に憧れていた若いグロリアと同棲をはじめていました。しかし妻に去られた傷は完全には癒えず、グロリアとの関係も少々ぎくしゃく気味。

そんな中で莫大な公金紛失事件が発覚。これはフィオーナに関係する資金ではないかとの疑いを抱いたバーナードでしたが、かつての上司ブレット・レンセレイヤーから調査を止めるよう警告を受けてしまいます。3年前の銃撃戦で重傷を負ったまま行方不明になっていたブレットには死亡説すら流れていたのですが、故郷のカリフォルニアで療養していたんですね。しかもそこにはCIAまで絡んでいる模様。

警告に逆らって情報局長のDGことヘンリー・クリーブモアに調査結果を直訴したバーナードでしたが、まるで極秘事項に触れた罰とでも言うように、逮捕状を出されてしまいます。果たしてフィオーナの亡命は、イギリス情報局が仕組んだ高度な工作だったのでしょうか・・。

「前3部作」の内容を根底から覆してしまいかねない展開には驚かされますが、著者の人気が日本で上がらない理由も理解できますね。とにかく、本筋と関わる伏線ともいえない箇所の描写が長いのです。スパイだって普段は普通の生活を営んでいることは理解できますし、これがリアルな姿なのでしょうが、詰めて書けば「新3部作」にするほどの内容ではないのでは?

2013/2