『オレたちバブル入行組』と『オレたち花のバブル組』に続くシリーズ第3作とは知らずに、前2作を未読のまま本書を読んでしまいましたが、本書のテーマを理解するうえでは差し支えないようです。
時代は2004年。バブル崩壊後に入社してきた、いわゆるロスト・ジェネレーション組もそれぞれの会社で中堅的な人材となりつつある頃。しかし銀行の系列であるセントラル証券に入社した森山は、バブル世代と比較して割を食っているとか、親会社の銀行からの出向組は子会社を腰掛にしか思っていないとか、不満たらたら。
そんな森山に転機が訪れます。近年成長してきたIT企業がライバルのITベンチャー企業を買収したいという大型M&Aの提案を受けるのです。しかしアドバイザーの座はあっさり親会社の銀行に奪われてしまうんですね。
銀行から出向していた上司の半沢(この人が過去2作の主人公のようです)は身勝手な親会社の理不尽な行動に怒りを覚えて、買収される側のアドバイザーにつこうとするのですが、果たして秘策はあるのでしょうか・・。しかもそのITベンチャー企業の社長は、森山のかつての同級生だったのです。
真山仁さんの『ハゲタカ』と比べると、同じ銀行内の人間関係に左右されるM&Aなどのどかに思えますが、まぁアメリカのファンドにも似たような事情はあるのでしょう。しかし、それを表に出すのか内部にとどめるのかでは大きな違いがありますよね。
ともあれ自分の人事処遇への影響などいっさい考慮せず、親会社である銀行を相手に大立ち回りを演じる半沢の行動は森山に深い影響を与えます。「世代論なんて関係ない。あるのは個人だけ」であり、「全ての働く人は自分を必要とされる場所にいて活躍するのが一番であり、会社の大小も知名度も関係ない」という正論を実行されてしまったら、もう言い返すことも、言い訳もできませんよね。
2013/2