りぼんの読書ノート

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歓喜の島(ドン・ウィンズロウ)

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1958年のニューヨーク。タイトルの「歓喜の島」とはマンハッタン島のこと。元CIAスパイで、現在は民間の会社で調査員をしているウォルターにまわってきた仕事は、若い上院議員と美しい妻の警護につくことでした。

この2人、明らかに大統領就任前夜のケネディとジャクリーン夫妻なんです。時代的には異なるけれど、上院議員に接近する金髪美女のモデルはマリリン・モンロー。ウォルターは、上院議員を警護しているうちに、彼の周囲に撒かれた国際的な謀略に気付いてしまいます。それは、彼自身とジャズ・シンガーの恋人アンをも引きずり込む恐るべき罠だったのですが・・。

謎の死を遂げる金髪美女を巡る物語ですが、「ジャズが響くスモーキーな街」という、当時のニューヨークの雰囲気はよく出ているように思えます。ただし、本書の主役は「ニューヨーク」そのものなんですね。「タイトル通り」と言ってしまえば、それまでなんですけど。^^

だから著者の得意とするストリート・キッズのような軽妙な会話も登場せず、犬の力のような力強い展開にもならず、ちょっと期待外れ感あり。上院議員からも、CIAからも、FBIからも、東側スパイからも追われて、絶体絶命の窮地に陥ったウォルターが危機を脱出する方法も安直に思えてしまいました。こんな感想を持たれるのは、期待されてハードルが高くなっている作家の宿命ですね。

2011/5