りぼんの読書ノート

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四畳半王国見聞録(森見登美彦)

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森見さんが原点に回帰した作品です。四畳半神話大系からは「詭弁論部」「図書館警察」「映画サークルみそぎ」や小津や、孤高の乙女・明石さんと思しき女性が、夜は短し歩けよ乙女からは樋口師匠が、走れメロスからは芽野と芹名が登場しますが、リンクにこだわる必要などありません。この本はこの本だけで完結しています。

水玉ブリーフを履いて無為を至上の行為とし、全宇宙の四畳半を支配する「阿呆神」のもと、四畳半を無限の広がりをもつ王国となす、自意識過剰な学生たちが妄想するミニマリズム的な世界は、「可能性」以外は何も持たずに「将来への不安」と闘っていた自分自身の学生時代を、徹底的に戯画化したもののように思えてなりません。男性も女性も関係ありません。

互いに関連する7編の短編からなりますが、抱腹絶倒キャラクターのオンパレードである「大日本凡人會」が最高に楽しめます。凡人を目指す非凡人たちが、突如現われた最強の敵と繰り広げる、徹頭徹尾無意味な物語・・。^^;

数式による恋人の存在証明に挑む数学氏、桃色映像のモザイクを自由自在に操るモザイク先輩、心が凹むと空間まで凹ませる凹氏、マンドリンをつまびき他人の能力を読む丹波の4名が、「凡人會」を退会させられた、誰にも注目されない能力を持つ無名君と、見た者誰もを眠らせる映画を作る初音さんのペアと闘って、無残に敗れ去るのですが、その楽しいこと、楽しいこと。

他には、孤高を宣言する「四畳半王国建国史、ミクロコスモス的な「蝸牛の角」、阿呆神の正体に迫る「真夏のブリーフ」、妄想と現実が交錯する「四畳半統括委員会」、誰からも好かれていると自負する男の悲しい妄想「グッド・バイ」、四畳半で友情が芽生えるに到る「四畳半王国開国史。久しぶりに抱腹絶倒の読書でした。^^

2011/5