りぼんの読書ノート

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水族館ガール(木宮条太郎)

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市役所に勤めて3年の由香が突然、市立水族館「アクアパーク」で働くように命じられ、とまどいながらも奮闘していくという、若い女性のお仕事小説です。『アクアリウムにようこそ』とのタイトルだった作品が改題され、ジュニア版として文庫化されたもの。 

 

水族館というと、華やかなイルカショーや趣を凝らした展示などが思い浮かびますが、もちろん裏方の仕事は大変です。しかも一部の超有名館を除くと公営水族館も多いようで、その実態に理解のないトップが天下ってくるなどの問題も多いようです。 

 

優秀ながら人間とのコミュニケーションが苦手な先輩や、飼育のプロながら政治的な駆け引きの苦手なチーフや、何でも相談に乗ってくれるものの運営にはタッチできない獣医や、やり手の総務部長や、普段は存在感の薄い館長という構成は、ステレオタイプな感もありますが、現在の水族館が抱える問題を上手に表現しているのかもしれません。 

 

曲者揃いの館員たちやイルカたちとも次第に心を通わせ、水族館を心から好きになった由香ですが、もともと市役所からの出向社員。はたして彼女のお仕事や先輩への淡い恋心はどうなってしまうのでしょう。実は由香のほうにも、水族館との因縁を抱えていたのですが・・。  

 

TVドラマ化されたことも納得できる、楽しい作品でした。「ジュニア版」とは知らなかったのですが、オリジナルのほうを読むべきでしたね。 

 

2019/10