りぼんの読書ノート

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僕の光輝く世界(山本弘)

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ある事件で視力を失った高校生の少年・光輝は、代わりに不思議な能力を手に入れました。それは損傷を負った脳が視覚神経以外からの情報で創り出した映像を、あたかも実際に見えているかのように思わせるものであり、医学的にはアントン症候群と呼ばれるもの。
 

 

もちろん現実の映像ではなく、記憶や聴覚、触覚、嗅覚などから作られた映像なので、現実とは異なっています。病院の看護婦はみな若くて美女ぞろいに、綺麗な声の少女は天使のように見えてしまう。声の似ている母と姉を混同したり、過去の記憶と異なっている箇所にはとまどってしまうのです。医学的には盲人なので、外出時には白い杖も手放せません。 

 

そんな光輝の前に奇妙な謎が次々と現れます。襲い来る仮面の怪人、壁の中に消えていく少女、突然滅亡してしまった世界、そしてアニメに登場する幽霊による殺人事件。「僕の目は見えない。だけど、真実は視える」という少年は、謎を解きながら、恋を知り、成長していくのです。 

 

第2章に登場して光輝に重要なアドバイスを与える不思議な女性の正体が不明なままなので、本書には続編もあるのでしょうか。もっともこの女性は『詩羽のいる街』の詩羽ですね。2つの作品の舞台は、同じ賀来野市なのです。 

 

2019/10