りぼんの読書ノート

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ジョン・マン3 望郷編(山本一力)

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万次郎らを救出したアメリカの捕鯨船ジョン・ハウランド号が、ついに母港のニューベッドフォードに到着。と思いきや、この巻はほとんどまるまる万次郎の回想に割かれます。といっても、そんなに長い期間の回想ではなく、ハワイを出港してからナンタケットに到着するまでのこと。当時の捕鯨船は、いったん航海に出たら2年から3年の間、鯨漁を続けていたのですね。船内で絞った鯨油は寄港地で売りさばき、肉などは捨てていたからできたこと。
 

 

捕鯨船は土佐沖にも立ち寄り、日本の漁師たちの鯨漁を目撃したりもするのですが、もちろん寄港できないので万次郎の心を乱しただけに終わります。著者は鯨に対して信仰心を抱くような日本の鯨漁と、欧米式の鯨漁を対比させたかったのでしょう。 

 

万次郎に対して人種差別的な感情を抱いた水夫もいたのですが、これも万次郎が転落した水夫を救出するために海に飛び込むという男気を見せるに至って、完全に仲間に迎え入れられます。それどころか、船名の一部をとった「ジョン・マン」と呼ばれることになるのです。アメリカ本土に上陸した万次郎は、はじめて報酬を得たり、開閉式の橋や石造りの銀行を見て驚いたりもするのですが、彼の異文化との本格的な接触は次巻以降で描かれることになります。 

 

2019/10