りぼんの読書ノート

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ジョン・マン4 青雲編(山本一力)

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ホイットフィールド船長に見込まれて養子となった万次郎は、16歳にして小学校に入学。捕鯨船の中で英会話は習得していたものの、読み書きはゼロだったので、これは当然のこと。なにしろ貧しい家庭に生まれた万次郎は、日本語の読み書きすら習得していないのです。
 

 

はるかに年下の同級生たちの中には、日本人である万次郎に差別意識を持つ者もいたのですが、彼の堂々とした振る舞いは次第に味方を増やしていきます。あからさまな人種差別から抜けられない牧師なども登場しますが、むしろ少数派。ホイットフィールド船長は万次郎のために通い慣れた教会から離れることまでするのです。 

 

船長からは数学を、船長夫人からは理科を習い、小学校の課程を卒業した後に、航海学校パートレット・アカデミーを受験した万次郎は見事に合格。異国の地にあって理解者に囲まれ、彼の青雲の志が次第に形になっていく巻でした。 

 

一方で、土佐で貧しい暮らしを送り続けている母親・志をや、万次郎の親方であった網元・徳右衛門らは、万次郎らの無事を信じて待ち続けています。実際に、八丈島などに漂着した漁師が数年後に帰還できた例もあるとのことですが、その可能性はゼロではない程度のことなのでしょう。この場合には、母親らの信念は後に報われることになるのですが。 

 

2019/10