りぼんの読書ノート

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ジョン・マン7 邂逅編(山本一力)

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1849年、万次郎が乗り込んだ捕鯨船フランクリン号は、3年4か月ぶりにニューベッドフォードに帰港します。航海途中で精神に異常をきたした船長を拘束するなどの異常事態も起こったものの、乗組員は全員無事で鯨も大漁。しかも万次郎は一等航海士に昇格していたのです。 

 

この航海では途中でハワイに立ち寄っており、万次郎は漂流仲間だった寅右衛門と再会を果たします。彼は現地で結婚して帰国の意思はなく、重助は病死していましたが、あとの傳蔵と五右衛門はホイットフィールド船長の船で日本へと向かったとのこと。「帰るときは5人で」との誓いは破られてしまったのでしょうか。もちろん事情があったのであり、結局は2人も鎖国下の日本に戻ることはできませんでした。 

 

あらためて全員で帰国を果たすとの思いを強くした万次郎は、帰国費用を稼ぐためにゴールドラッシュで湧くカリフォルニアへと向かう決意を固めます。既に乱獲によって大西洋の鯨は激減しており、捕鯨は斜陽化していたのです。ホイットフィールド船長をはじめ、深く世話になったニューベッドフォードの人々と町に別れを告げて、一等航海士として西海岸へ向かう万次郎でしたが、捕鯨船と客船の勝手の違いに戸惑います。なんせ客船の「積荷」はひとりひとり意志を持った「乗客」なのですから。 

 

ホイットフィールド船長に別れを告げた際に、「何のために帰国するのか」と問われた万次郎は、母との再会と、会得した航海術の伝承に加えて、日米友好親善への貢献をあげて、船長から一括されます。それは船乗りの分を超えていると。船長からの最後の教えでした。次巻、サンフランシスコで万次郎はどのような経験を積むのでしょう。既に中国人移民も増えていた西海岸では、東洋人差別も厳しくなっていたはずであり、勝手の違いに苦しむことになりそうです。 

 

2020/3