りぼんの読書ノート

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ジョン・マン2 大洋編(山本一力)

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著者と同郷の幕末の偉人、ジョン・万次郎の生涯を丁寧に描いている作品の第2作では、漂着先の鳥島アメリカの捕鯨船に救出された万次郎ら5人の漁師が、ハワイに到着するまでが描かれます。鎖国中の日本に立ち寄れないアメリカ船には、漁師たちを故郷の土佐に送り届けることはできなかったわけです。
 

 

4人の漁師たちの中で、もっともアメリ捕鯨船の乗組員に馴染むことができたのは、もちろん万次郎。水夫に重要な遠目が利くという特技や、14歳という若さがものを言って英会話の習得が早かったというだけではありません。もともと利発で、柔軟で、素直で、適応力に優れており、なんといっても進取の気概に溢れていたのでしょう。 

 

もちろん他の漁師仲間を放置して、自分だけアメリカ人にすり寄ったわけではありません。ハワイで下船して帰還の機会を待つという4人を含めて5人分の帰国費用を稼ぎ出すために、捕鯨船の水夫として旅を続けることを決めるのです。もっとも上海経由で沖縄まで戻っても、鎖国中の日本が万次郎らを受け入れてくれるとは限らないのですが。 

 

そんな万次郎は、水夫仲間のみならず、ホイットフィールド船長に気に入られます。なんと帰国後には自分の養子として教育を受けさせるほどなのですから、並大抵のことではありませんね。帰国まではさらに1年以上の航海が続くのですが、その様子は第3巻で描かれることになります。 

 

2019/10