りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ジョン・マン1 波濤編(山本一力)

f:id:wakiabc:20190825153154j:plain


江戸人情物語を主戦場としていた著者ですが、本書の主人公は数奇の運命を歩んだジョン万次郎。漂流漁民として
アメリカに渡り、高等教育を受ける機会を与えられたものの、移民としての苦しい生活を経験し、自力で帰国を果たしたのちに、幕末の日本で重要な役割を担うに至った男の物語。著者と同郷の偉人です。 

 

第1巻では、万次郎が乗り組んだ漁船が無人島に漂着し、アメリカの捕鯨船に救出されるまでが描かれます。9歳の時に父を亡くして中浜漁師の下働きに出た万次郎は、寺子屋に通う余裕もなく、読み書きもできなかったとのこと。ただ視力の良さは生来のものであり、これが後に彼を救うことになります。14歳の時に乗り込んだ漁船が足摺岬沖で漂流し、たどり着いたのは無人島の鳥島小笠原諸島よりは本土に近いものの、自力で帰国できる距離ではありません。漁民たちはそこで143日間も生き延びたのです。 

 

それと並行して、万次郎らを救出することになるアメリカの捕鯨船長、ウィリアム・ホイットフィールドの物語も描かれていきます。彼は、正義感が強く、公平さを重んじ、なおかつ斬新なアイデアに富む船長として、出資者からも船員からも人望を集めていました。アメリカの捕鯨基地であったマサチューセッツ州ニューベッドフォードを拠点とするジョン・ハウランド号が太平洋に乗り出したのは、当時既に乱獲によって大西洋からクジラが減少していたからですね。もちとん鎖国中の日本に近づかないことは厳命されていました。 

 

かくして運命の出会いが訪れようとしています。2巻めでは、救出されてアメリカの捕鯨船で働くようになる万次郎が、ホイットフィールド船長の信頼を勝ち得るまでが描かれるのでしょう。 

 

2019/9