りぼんの読書ノート

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ジョン・マン5 立志編(山本一力)

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鎖国下の日本から漂流後、アメリカで生活を始めた万次郎は、ホイットフィールド船長夫妻の教育を受けて、航海術船員学校であるバートレット・アカデミーに見事合格。最年少ながら既に水夫として捕鯨船に乗り込んだことがある万次郎は、学友たちからも一目置かれる存在となっていきます。実力の前では人種差別意識など消し飛んでしまう、移民社会の良い面があったのですね。もっとも中国からの移民労働者が急増していた西部では、かなり事情が異なってきているのでしょうが。
 

 

そんな中で、ホイットフィールド船長が新造の捕鯨船に乗り組むことになり、万次郎は船長の家を出て住み込みで働きながら学校に通うことになります。彼が選んだのは樽造り職人の仕事でした。かさばる空き樽など船内に置いておけないので、鯨油を絞る都度、船内で樽を組み立てる職人というのは、捕鯨船で高い地位を得ていたのですね。 

 

万次郎が選んだ樽職人は、腕は良いもののケチで偏屈で、奥さんを事故で失ってからはそこに磨きがかかった状態。かなりの重労働を強いられるのですが、彼を救ったのはブラジルから移民してきた少年でした。ともに移民であるが故の郷愁を分かち合ったふたりは、協力し合いながら手に職をつけていくことになります。 

 

次巻ではいよいよ、船員養成学校を卒業した万次郎が、捕鯨船に乗り込むことになりそうです。ゆっくりとした進行からは、同郷の英雄である万次郎の生涯を丁寧に書き綴っていきたいという、著者の心意気が感じられます。 

 

2019/10