8月中旬から「はてなブログ」に引っ越してから1月以上がたちましたが、まだレビュー記事をアップするのに精いっぱいで、目次や索引にまで手が回りません。そんな中ですが今月は、ノンフィクションに素晴らしい作品が多かった印象です。
まるでノンフィクションかと思えるほど精度の高い小説を紡ぎ出し、ひとつのジャンルを生み出した観もある著者が、自らの半生を綴った自伝です。ジャーナリスト時代の体験が、初期3部作である『ジャッカルの日』、『オデッサ・ファイル』、『戦争の犬たち』と深く関わっていたくだりは、とりわけ興味深く読みました。少年時代に抱いた夢を叶えて筆を置く展開も見事です。
2.極夜行(角幡唯介)
既に未踏の地など残されていない現代において「新しい未知」として著者が選んだのは、極夜世界の単独行でした。目印となる周囲の風景が全く見えない漆黒の闇の中を、天体観測を頼りに歩み続けることの不安が読者にも伝わってきます。そして1匹の犬を連れとして、北緯80度近いグリーランド北西部の氷原を歩ききった著者は、極夜明けの最初の太陽を見て何を感じたのでしょうか。
3.ロケットガールの誕生(ナタリア・ホルト)
UCLAの学生同好会からスタートし、やがてNASAの一部となるJPL(ジェット推進研究所)で活躍した女性たちに焦点を当てたドキュメンタリー。先進国アメリカでさえ男女同権など程遠かった時代に、最先端分野で働いた女性たちの誇りと苦労がしみじみと伝わってきます。そして宇宙探査にかけた夢も!
【次点】
・ロイスと歌うパン種(ロビン・スローン)
【その他今月読んだ本】
・江戸オリンピック(室積光)
・不意打ち(辻原登)
・飛族(村田喜代子)
・海の乙女の惜しみなさ(デニス・ジョンソン)
・藪医ふらここ堂(朝井まかて)
・漂流(角幡唯介)
・地球星人(村田沙耶香)
・ペナンブラ氏の24時間書店(ロビン・スローン)
・あやかし草紙 三島屋変調百物語五之続(宮部みゆき)
・未来を読む(ジャレド・ダイアモンド、ほか)
・蠅の王(ウィリアム・ゴールディング)
・戦うハニー(新野剛志)
・ジョン・マン1 波濤編(山本一力)
・常設展示室(原田マハ)
・幻想寝台車(堀川アサコ)
・ホープは突然現れる(クレア・ノース)
・大脱走(荒木源)
・極夜行前(角幡唯介)
・朝が来る(辻村深月)
2019/9/30